開襟シャツ&昭和エッセイ シュガ・プラム・フェアリ  
 
 エッセイ
  当サイトでは気ままに60年代以降の昭和の思い出をエッセイとして綴っています。記憶違いや思い込
 み、うろ覚えで書いたものもあります。ご理解いただいたうえ、お読みいただければと思います。また、
 このような性質のエッセイですので、記述に誤り等ございましたらBBSでご指摘いただけると幸いです。
  素浪人 花山大吉  ’60s ’70s
 私が子供の頃よく見た時代劇といえば、「銭形平次」「水戸黄門」「大岡越前」で、NHKの大河ドラマだと「天と地と」「樅の木は残った」あたりがお気に入りだった。しかしいちばん好きな時代劇はダントツでこの「素浪人 花山大吉」であった。
 素浪人 月影兵庫」の続編であることは知っていたが、こちらの方は唯一、猫が弱点だったということ以外ほとんど記憶が無い。ところでこの「花山大吉」が今、ありがたいことにケーブルの時代劇チャンネルで第1話から再放送されている。しかし、最初の頃は白黒だったのは意外だった。人気時代劇といえども60年代終わりまでは白黒放送だったようだ。
月影兵庫
  このドラマの最大の魅力は花山大吉(近衛十四郎)と焼津の半次(品川隆二)のキャラクターにある。大吉と半次、2人のやりとりは数ある時代劇の中でも最高のおもしろさだ。「このおから野郎!」という具合に2人の口喧嘩が始まると、私は今でもウキウキとしてしまうのだ。また、大吉の殺陣は、どっしりとして迫力があってこれも見ものだ。刀はすぐには抜かず鉄扇()だけで数人のゴロツキたちを見事にさばいてしまうほどの剣豪だ。この2人、正義感が強く、義理人情にも厚く、些細なことでも関わりを持った人たちが窮地とみるや命を賭けて戦ってくれるのだ。いつも金欠状態なのに、決して汚い金には手を出さない清貧さもある。ともかく、今の日本人が失いかけている大事な何かを思い出させてくれる。
  半次はお調子者だが、大吉は沈着冷静で見識も高く抜群の推理力で悪人の悪だくみをすぐに暴いてしまう、実に頼もしい「旦那」だ。しかも曲がった事が大嫌いで、権力に決して媚びずに己の正義を貫くのだ。半次はこの大吉の人柄に惚れ抜いて、いつもあとにくっついて旅を共にしている。
 この焼津の半次は、木枯らし紋次郎と同じく無宿渡世人だ(しかしなぜか軽装で、笠も振分荷も持っていない。不思議だ)。主な収入源はだいたい博打らしい。子供の頃、私はこの無宿渡世という生き方がよく理解できなかった。いずれ間違いなく行き倒れて死んでしまうだろう。終生、無宿渡世という生き方が現実に存在したのだろうか? それともどこかで気心の知れた親分さんと出会い、そこの用心棒として土着していくのだろうか? あるいは、放浪先で出会った娘かなんかと恋に落ちて一緒に農業でも営むのだろうか?

  大吉も不思議な人物で、よろず相談業を営みながら放浪の旅を続けているのが、これまた長年の謎だった。ウィキペディアよると、大吉は道場を経営していたが、家族を失ったことで受けた心の痛手を癒すために旅をしているとのことだった。なるほど、これならあの凄腕の剣も納得できる。そんな大吉だが、緊張するとシャックリが止まらなくなるという困った弱点がある。治すには腰の瓢箪に入った酒を飲む必要がある。それから、稼業のよろず相談業だが、てっきり剣 
腕を生かしてもめごとなどの仲裁屋をやっているのかと思えばさにあらず。営業不振の店の経営コンサルタントみたいなことまでやっているのだ。
  ところで初期の「花山大吉」を鑑賞していたら懐かしいBGMに出くわした。昔はチャンバラの場面になると「チャンチャカチャン、スチャラカチャンチャカチャン」という軽快なメロディーで始まり、途中からクラシックの「天国と地獄」に切り替わるというのが定番だった。最近すっかり影を潜めていたので、この番組でこのBGM を聞いた時は「これぞチャンバラだ!」という感じで、古い友人に久々に再会したような気分になれた。
  最後に、花山大吉といえばやっぱり大好物の「おから」であろう。「きえもの」の項でも触れたが、大吉はおからを見ると理性を失いひたすら貪り喰い、酒が進み過ぎて最後はベロベロに泥酔してしまうのだ。いつも沈着冷静な大吉が豹変してしまう、このギャップがおもしろかった。あの半次が呆れてしまうくらいひどいのである。私も子供の頃、これを見てどうしてもおからが食べたくなり母に用意してもらったものの、バサバサしているだけで子供には決して美味しいものではなくガッカリしたものだ。
  しかしながら現在、私はおからを肴に熱燗で一杯やりながら毎日このドラマを楽しんでいる。家人はそんな私を見て指さして大笑いするが、ほっといて欲しいのである。子供の時から、おからで一杯やってみたいと常々思っていたのだから。テレビで大吉のおから騒動がある回はひとしお酒が旨くなる(笑)。酔うと「このバカタレが!」が口癖になってしまいそうな今日この頃である。
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