開襟シャツ&昭和エッセイ シュガ・プラム・フェアリ  
 
 エッセイ
  当サイトでは気ままに60年代以降の昭和の思い出をエッセイとして綴っています。記憶違いや思い込
 み、うろ覚えで書いたものもあります。ご理解いただいたうえ、お読みいただければと思います。また、
 このような性質のエッセイですので、記述に誤り等ございましたらBBSでご指摘いただけると幸いです。
  懐かしのアメリカ・ドラマ3 逃亡者  ’60s
 60年代中盤に放映されたアメリカのテレビ・ドラマ「逃亡者(The Fugitive)」を覚えておいでだろうか? リチャード・キンブルという医師が妻殺しの容疑で逮捕され、護送途中の列車事故をきっかけに逃亡し、アメリカ国内を真犯人を探しながら流れ歩くお話、である。
 キンブルは妻といざこざを起こして自宅を飛び出したが、戻ってみると妻が死んでいて、その時にすれ違った男が犯人だと確信する。しかしそれ
を証明することができずに、裁判の結果死刑を宣告されてしまったのだ。列車で「電気椅子」へと護送する途中にキンブルを取り逃がしたジェラード警部は、汚名挽回のため鬼気迫る執念で彼を追いかけてくる。キンブルは生きるために逃げる。時に人情に触れ、時に人間の非情さに失望しながら、職と偽名を替えて街から街へと逃亡の旅を続ける…… といったドラマだった。
 キンブルを演じたデヴィッド・ジャンセンは、ハンサムではあるが憂いを湛えた独特の顔立ち。まさにこの物語の主人公キンブルを演じるにピッタリのルックスであった。均整のとれた体つきで、「3つボタン段がえり中1つ掛け」のジャケットにノー・タックのスラックスという、いわゆるトラディッショナル・スタイルがよく似合っていた。そして一方の敵役、ジェラード警部を演じたバリー・モースは、小柄でゴブリンのような強面。いかにも神経質そうな感じだった(髪型、変だったなぁ)。決して笑顔を見せることのない冷徹な警部役には、これまたうってつけ。ちなみに'93年に映画化された時はキンブルをハリソン・フォードが、ジェラードをトミー・リー・ジョーンズが演じていた。
 ジャンセンの日本語吹き替えは睦五郎で、まったく違和感がないキャスティングだと思っていた。しかし俳優としての睦はやたらと悪役が多く、子供心に「キンブルの声」がヤクザの親分や悪賢い役人の口からが聞こえてきた時、ガッカリしたことを思い出す。それから、同じ声の出演者で、ナレーションを担当していたのが矢島正明だった。矢島といえば「0011ナポレオン・ソロ」のソロの吹き替え声優。ソロの軽妙な語り口と比べて、こちらのナレーションは大まじめというか緊迫感を持たせた口調で、そのギャップがおかしかったことも印象に残っている。
 昔はチャンネルの主導権は父親が握っていた。つまり、このドラマも父が好きで見ていたのを「見せられて」いたのが、毎週見ているうちにだんだん好きになってしまった。なにしろ、毎回スリリングなストーリーの中に心温まるエピソードが組み込まれていて、「次はキンブル、どうなっちゃうんだろう?」という興味が湧くような作りになっていたからだ。逃亡の旅先で出会う人たちには、キンブルの人柄を理解し逃亡を手助けする者もあれば、さらなる罪の濡れ衣を着せようとする者もある。そういう状況の下、「木枯し紋次郎」ではないが、キンブルは関われば自分が囚われてしまうかもしれないとわかっていながら、その人間性から厄介な出来事に首を突っ込んでしまい、それを丸く収めて去っていく。これがまたこのドラマの魅力でもあった。
 しかし、このドラマなかなか終わらなかった。調べてみたら120話まであったのだそうだ。さすがにそうなると最後の方は「まだ終わらないの〜?」って感じで、子供の感覚ではマンネリ感を抱いた記憶がある(ちょっと前に日本でも、江口洋介主演でテレビ・ドラマ化されたが、これは元のドラマを見ていた者にとっては逆にアッサリしすぎだった)。
逃亡者キンブル  「逃亡者」を見ていてその頃不思議だったことがある。キンブルのファッションだ。上述したように、ジャンセンはトラッドの似合う俳優。いつもパリッとしたボタンダウンのシャツとジャケットを身に着け、ピシッとプレスのかかったスラックスを穿いていた。それだけではない。時にはジーンズ姿にバラクータ・タイプのジャンパー、スポーツ・セーターなど、とにかくオシャレで衣装持ちなのだ。スーツ・ケース1丁、時には着の身着のままで逃げ続けているキンブルが、どうしてこんなに小ぎれいなのかと思っていた。まあ、逆にアメリカン・トラッド・ファッションへの憧れも募ったわけだが……(ジャンセンだけでなく、出演者の'60sファッション
実に素敵だった)。
 長く続いたこのドラマが終わったあと、デヴィッド・ジャンセンの顔を見ることはほとんどなかったように思う。カッコイイ俳優だったので、もっと活躍してもらいたかったのだが……。ジャンセンは49歳という若さで'80年に他界したとのことである。
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