常に「子供の好きな食べものベスト3」に入るカレー・ライス。野菜が嫌いな子供でもカレーならキレイに食べてしまうことが多い。 60年代は不味い料理を出す食堂が珍しくない時代だったが、そんな時はカレーを注文しておけば無難だといわれていた。それに、注文して待たせないメニューだったので早い、安い、安心みたいなイメージがあった。 |
 |
だが、私はあの頃はそれほどカレーが好きではなかった。もちろんよくできたカレーは大好きだったが、当時のいわゆる大衆食堂のカレーは煮込みが足りないのが多くて、玉ねぎがゴリゴリしていたり肉は脂身ばかりで私には馴染めなかった。そういうカレーは、傾向としてルウが黄色すぎるものが多かった。そういえば、大衆食堂でカレーを注文すると、水の入ったコップにスプーンを突っこんで一緒に持ってくるのが常識だったっけ。それと、小学校の給食のカレーもいただけなかった。カレーを食べて胸焼けすることもしばしばあった。
家庭の手抜き料理の代表のようにいわれたのもカレーだった。いっぺんカレーを作るとしばらくの間、立て続けにカレーを食べさせられるハメになるからである。高校生くらいになると外食のために親から金をもらって、よくカレーを食べた。だんだん味もよくなって、駄目カレーはスキー場のレストラン以外では見かけなくなった。不味いカレーが減ってきたのはレトルトが普及したあたりからだろうか? そしていつの間にかカレー専門店は街のあちこちで見かけるようになっていった。
最初にカレーの悪口を書いてしまったが、この料理の素晴らしい所はいくらでも自由に工夫することができるということだろう。一見、カレーなんてどこで食べても同じものだと思われがちだが、各家庭ごとに違いがあるし、それが「おふくろの味」のようになっていた。ちょっとこだわりがある人ならば、あっと驚くような素材や隠し味を入れているはずだ。
本場インドのカレーを初めて食べたのは大阪万博の時だった。そこで初めて日本のカレーとは別物だということを知った。カレーが国際化されると、やがてマニアックな人が作るカレーはどんどんインド風に近づいていった。この頃私は、私にとっての「第2のカレー受難時代」到来の予感がした。あのサラサラしたカレーを白米にサーッとかけると、スープおじやみたいになってしまうのである。味は悪くはないのだが、やっぱり私はとろみのある日本カレーがいい。これが主流になっていったら嫌だなあと思っていたが、幸い主役交代には至らなかった。
もちろん私はインド人シェフの作る本格インド・カレーも大好きである。しかし日本風カレーはもはや日本人の故郷の味なのだ。私たちのDNAにしっかりと刻み込まれてしまったようだ。1週間の昼食メニューを眺めてみるとカレー、ラーメン、そば(うどん)を交互に食べている。もう飽きたと思っても、すぐまた食べたくなるのがカレーなのである。
美味しい日本風カレーを作るのに特別な素材はいらない。たっぷりの玉ねぎを徹底的に炒めればいいのだ。牛肉も強火で炒めて旨味が逃げないようにして、ワインでコトコト煮込めばいい。ほとんどシチューと同じ作り方で、実に簡単である。あとはお好みで隠し味やスパイスを入れればいいだけだ。私ならソースやミルク、ガラムマサラを入れる。先日はチョコレートを入れる人を見かけたが、なるほど、まろやかな香りが増すようだ。ああ、こうやって書いていると無性にカレーを食べたくなってくる。
ところで以前掲載した「カレー・ライス」の項の執筆担当者は、自他共に認める「カレーの王子様」だ。やはり彼も市販のカレー・ルウを使わずに、ターメリックやらコリアンダーやらなんやら…… よくわからないスパイスを煎って配合を決めて、オリジナル・カレー粉を作って悦に入っている。そして出来上がるのが、タマネギが完全に溶けて肉がホロホロのエスニック風カレーだ。どうせなら一歩踏み出して、大好きな沖縄を意識したカレーでも編み出せばよ
| いものを、と思う。最近では「アカバナ(AKABANAH)」とかいうTシャツをプロデュースしてしまうくらい沖縄が好きなのだ。トロピカル・フルーツを使った「アカバナ・カレー」なんてのはどうだろうか? 「アカバナ」とはトナカイのことではなくハイビスカスなのだそうだ。関係ないが「アオバナ」といったら、昔よくいたハナタレ小僧のことだ。 |
 |
*アカバナ・カレーだなんて、無責任なことは書かないように! それにトナカイは「アカハナ」だし、ハナタレ小僧は「アオッパナ」だ!(ツッコミ by「カレーの王子様」) |