開襟シャツ&昭和エッセイ シュガ・プラム・フェアリ  
 
 エッセイ
  当サイトでは気ままに60年代以降の昭和の思い出をエッセイとして綴っています。記憶違いや思い込
 み、うろ覚えで書いたものもあります。ご理解いただいたうえ、お読みいただければと思います。また、
 このような性質のエッセイですので、記述に誤り等ございましたらBBSでご指摘いただけると幸いです。
  ELO 煌めくサウンドの魔術師  ’70s

 70年代後半、何気なく見たミュージック・ライフ誌で紹介されていた、あるレコード・ジャケットの絵柄に目がとまった。それは当時、人気画家だった長岡秀星氏が描いた美しい虹色の円盤型の宇宙船だった。そのアルバムのタイトルは「アウト・オブ・ザ・ブルー」、アーティスト名は「エレクトリック・ライト・オーケストラ」だった(エレクトリック・ライト・オーケストラでは長いのでE. L.O.と略して呼ばれる)。
  紹介文を読んで、なにやら電子楽器による未知の美しいスペーシィ・サウンドを聴かせてくれるのではないかと期待を膨らませ、すぐこの2枚組みのアルバムを購入した。が、期待していたような電子的ミュージックではなかった。しかし聴いているうち、ポップでありながら深みのあるそのサウンドにすぐに魅せられてしまった。ライナー・ノートを読むとドラマーのベヴ・ベヴァンが直接日本向けの解説を加筆していた。どうやら前作の「オーロラの救世主」というのがアメリカでとんでもない大成功を収めたアルバムだったらしい。
  すぐにこの「オーロラの救世主」というLPを購入して聴いた途端、たちまちのうちに私はこのバンドの熱烈なる信奉者になってしまった。それはビートルズを初めて聴いた時の衝撃に近かったのだ。今までに無い、クラシックとロックの融合というまったく新しいジャンルの音楽だった。重厚なストリングスにハードなドラムやエレキ・ギター、シンセが重なっていく。しかもメロディーは美しく、独創的なコーラスや遊び心のある仕掛けも随所にある。たくさんの素晴らしい音色が幾重にも織り込まれていく…… そんな感じの、時代の旗手ともいうべき新しいロック・オーケストラだった。

メンバー構成はギター、ベース、ドラム、キーボード、チェロ×2、バイオリンの7名で、リーダーのジェフ・リンが作曲からボーカル、リード・ギターを担当しているバンドだ。私はこのバンドのデヴュー時代へとさかのぼり、聴き始めた。すると、このバンドもビートルズと同じくサウンドが大きく変貌していることが判明した。最初の頃は実に難解でわけのわからんような曲ばかりで、なんとプログレッシブ・ロックと分類されていた。
  当時のライナー・ノートによると、このバンドがプログレ・グループとしてシングルヒットを飛ばしたという事実は画期的なことだったというようなことが書かれていた。そのヒット曲はビートルズで有名な「ロール・オーヴァー・ベートーベン」だが、イントロが

 ELO ジェフ・リン
ベートーベンの「運命」で始まるというアイデアの面白さでヒットしたという感じだった。
  しかし後の「エルドラド」、「フェイス・ザ・ミュージック」というアルバムあたりからジェフ・リンになんらかの変化が芽生えポップな曲調が増えてきた。私は1つひとつの曲を聴くにつけ、ジェフ・リンにとてつもない才能を感じていた。それはあのビートルズ級と思えるほどだった(実際、アメリカでもレノン-マッカートニーの延長線上だとか再来とか言われていたらしい)。私には当初ジェフ・リンに対して気難しい人だという印象を持っていた。中期のライブでは黙って淡々と歌うだけで、ドラムのベヴァンがリーダーの代わりに観客に向かってしゃべっていたからである。ところが音楽がポップになった頃には、ジェフは笑顔で観客に話しかけるようになった。やはり音楽と同様に心境に変化が現れたのではないだろうか?
  E. L.O.は「アウト・オブ・ザ・ブルー」以降も快調にヒットを飛ばした。クラシックの要素が薄まり、よりポップ路線にシフトしていったが、ジェフ・リンのメロディー・メーカーぶりは健在で、オリビア・ニュートン・ジョンに書いた「ザナドゥ」は名曲だし、「ロンドン行き最終列車」は私の大好きな曲の1つだ。しかし、残念ながらこのあたりでサウンドの進化が止まってしまったのだ。これ以降はアルバム「ディスカバリー」の踏襲でしかなかった。私はE. L.O.にクラシックとロックの融合の究極スタイルを夢見ていたのだが、クラシックの要素はまったく消え、ポップな路線に定着してしまった。「ディスカバリー」以降のアルバムには針を落とす機会も少なくなり、時の流れと共に次第に私のE. L.O.熱も薄れていった。
  それから10年ほど月日が過ぎたある日、TVで懐かしいE. L.O.風サウンドに出会って驚いた。曲の名は「アジアの純真」である。音の作りは後期のE. L.O.を彷彿とさせられるが、高度で、かつメロディーはオリジナリティーがあり、大変見事な(オマージュ)作品だと感じた。当時、作曲の奥田民生氏の才能にとても驚いたものだ。ふと、この曲をジェフ・リンにも聴いて欲しいものだと思った。現在リンはバンドを止め、音楽プロデューサーをやっているそうだが、昔を思い出して、再びあの煌めくサウンドを復活させて欲しいものだ。
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